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答弁書(2005/05/27)

答弁書(被告:中西氏提出書類)

本件訴訟は2007年3月に第一審判決が言い渡され、既に確定しています。このページは、ネット上の表現を巡る紛争の記録として、そのままの形で残しているものです。

平成17年(ワ)第914号損害賠償請求事件
原告 松井三郎
被告 中西準子

答弁書

2005(平成17)年5月27日

横浜地方裁判所民事第9部 合議係 御中

被告人代理人弁護士 弘中惇一郎
弁護士 弘中絵里  

第1 請求の趣旨に対する答弁
 原告の請求をいずれも棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
 との判決を求める。

第2 請求の原因に対する答弁
1 1項はすべて認める。
2 2項(1)について
 被告が、平成16年12月24日に、被告個人のホームページ上に甲1号証の記事(以下本件記事という)掲載を行ったこと、ならびに、その記事中に原告指摘の箇所が存在することは認める。ただし、本件記事の意味は甲1号証全体としての流れの中で評価されるべきものであり、このように、一部分だけを切り離して、評価するべきではない。
3 2項(2)の主張は争う。甲1号証に明らかなとおり、学術的見地から、原告の問題提起の仕方を問題にしたものであり、「原告の関心内容」や「原告が原論文をどのように吟味したのか」といったことを問題にしたものではない。
4 2項(3)は争う。自分の意見発表の仕方が批判されたからといって、それを「研究者としての社会的評価の低下」と結びつけるのは論理に飛躍がありすぎる。
5 3項について
 争う。
6 4項、5項について
 争う。

第3 被告の主張
1 憲法第21条及び第23条からして、他人の学説あるいは研究発表の方法などについて、学問的見地から批判することは全く自由であり、その権利は最大限に保証される。厳しい相互批判がなくしては学問の進展など望むべくもない。
 したがって、そのように批判されたことに憤慨して、それを「名誉毀損」などと評価して金銭的請求をするなどということは、およそ学者・研究者としての立場をわきまえないものである。
2 甲1号証における被告の言論が、被告の学者としての立場から、原告のナノ粒子の有害性についての問題提起のあり方を批判するものであったことは、甲1号証を一読すれば明らかである。
 すなわち、新聞は、往々にして、ニュース性のあるものを優先して、しかも刺激的な見出しを付けて掲載するのであるから、センセーショナルな見出しのついた新聞記事を、何ら専門家としての判断を加えずに、そのまま掲げて、問題があるような話をするなどということは、参加者に誤った印象を植え付ける危険性が高く、専門家としてのプレゼンテーションとしては適切ではない。
3 本件で、原告が、新聞記事(原告の主張によれば京都新聞のようである)を掲げて、それを切り口としてナノ粒子について発表したことは事実である。
 この基本的事実を踏まえて、被告は、そのようなプレゼンテーションは不適切であると批判したものである。原告の人格攻撃をしたものでないことは明白である。
4 以上のとおりであるから、本件提訴が理由がないのみならず、学問の自由・表現の自由の見地からして到底許されないものであることは明白であり、直ちに棄却されるべきである。
 なお、本件のような問題を訴訟の場に持ち込むことが不適当であることは明白であり、違法提訴にあたるものと考えている。被告としては、原告が、冷静さを取り戻して本件訴訟を速やかに取り下げることを期待するものである。

以上