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現在位置: 【New】令和7年(ワ)第561号

本件訴訟について

今後の進行予定

【進行状況】 次回期日:2026年03月25日 13:30

本件訴訟について

札幌市にある「エンブレム札幌清田」(以下、エンブレム)は、2棟からなるマンションである。2018年に、それぞれの棟に1つずつNMRパイプテクターを導入した。防錆効果を期待しての導入であったが、設置後に上水管が閉塞したり、上水管に穴があいて漏水が起き、管の一部を交換するといった対応が必要となった。

導入のきっけかになった重要な要素は「10年保証」「効果がなければ全額返金」という、日本システム企画株式会社側の事前説明であった。しかし、契約締結の時の書類はこの内容にはなっておらず、返金対応は初年度のみとなっていた。10年保証とは、効果が無かった場合に新品のパイプテクターと交換する、つまりパイプテクターがたまたま不良品等であった場合に完動品に交換するという趣旨のものであり、そもそもパイプテクター自体が効果を発揮しないシロモノであった場合は含まれていなかった。つまり、パイプテクターの防錆効果ありきの内容であったということである。

不信感を持ったエンブレム側は、装置の効果にも疑念を抱き、本当に防錆効果があるかどうかをマンション内において独自の実験で確認した。独自の実験といっても、水道配管の一部に配管部品を設置して通水し錆の発生状況を確認するだけの簡単な実験である。

ニップルの錆発生実験

当初、配管内に釘を設置してパイプテクターを通った水を流したところ、釘が錆びまくるという結果になった。そのことを日本システム企画株式会社に伝えたところ、異種金属が接触したから錆びたのだとか、釘の組成は配管の材料とは異なるといった反論があった。このため、図のように、配管の一部を樹脂製のものに置き換えて、さらにその一部を透明配管として内部が観察できるようにし、水道配管の材料であるニップルを挿入して錆を観察した。日本システム企画株式会社が効果発生の条件としている15L/日の流水量は十分に満たしていた。

結果は写真の通りで、水道配管材料であるニップルには錆が発生し、パイプテクターを通過した水の防錆効果は確認できなかった。なお、日本システム企画株式会社は、勝手な実験をしてもそんなものは認めないと言い張っている。ユーザーに実験される前に社内で実験して確認して置くべきもののはずだが……。

さらにパイプテクターに対する疑念を深めたエンブレム側は、2024年8月に2つ設置されているパイプテクターのうちの1つを取り外して分解した。その結果、NMRパイプテクターはステンレスのケースの中に、2個ずつ組み合わせたネオジム磁石を樹脂で固定しただけの構造であり、NMR効果、水分子共鳴、赤錆抑制などの効果がまったく期待できないことがはっきりした。分解時の写真を以下に示す。なお、分解の様子は動画でも公開している。

パイプテクター設置状況 分解 磁石部分

実は、本件とは別の訴訟が現在進行しており(戦略上の事情により内容は今のところ非公開)、そちらの弁論で、日本システム企画株式会社は、磁石と樹脂のみの構造のものに防錆効果はないことを明言している。

さて、ここ数年の社会状況をみると、コロナのパンデミックやロシアによるウクライナ侵略があり、円安も進んだ。もし、NMRパイプテクターがなければ2018年頃に配管の修繕をしていたところ、パイプテクター2台分の代金を支払ってしまって修繕が遅れた結果、現在の値上がりした費用でしか修繕ができないことになった。全く効果のない装置を知っていて売りつけたのだから、返品返金だけでは済まず、2018年に修繕をした場合との差額を支払う義務が日本システム企画株式会社に生じることになった。そこで、エンブレム側は日本システム企画株式会社を提訴するに至った。

重要なことは、効果が無かったから提訴した、という話ではなく、分解してみたら導入の時に特許を引用して説明されたものとは全く異なる構造の装置だったという理由で提訴しているということである。効果が無かったのは理由としては補足的な位置付けである。もちろん、提訴に至った主な動機は効果がなかったからなのだが、請求内容としては、事前説明されていたのとは全く構造が違う、いわば別物が納品されたので返品返金の対象だろうという話である。