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本件訴訟のプレスリリース

プレスリリース:乙6号証(反訴原告:中西氏提出書類) 

本件訴訟は2007年3月に第一審判決が言い渡され、既に確定しています。このページは、ネット上の表現を巡る紛争の記録として、そのままの形で残しているものです。

 原告代理人による、本件訴訟に関するプレスリリース。○に数字は機種依存文字なので、1)、2)などに変更した。化学物質問題市民研究会のウェブサイトhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.htmlの掲示板に投稿された内容である。


掲示58(2005年3月17日)

2005年3月16日
原告代理人 弁護士 中下裕子
〒105-0004東京都港区新橋4−25−6
ヤスヰビル2・6階
コスモス法律事務所

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/keijiban/keijiban05.html#%8Cf%8E%A658

プレス・リリース

本件名誉毀損裁判について

1.本件訴訟の概要
(1)当事者
   原告:松井三郎・京都大学地球環境学大学院教授、文部科学省特定領域研究班(平成13〜15年度)「内分泌攪乱化学物質の環境リスク」代表
   被告:中西準子・独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター所長、前横浜国立大学教授

(2)請求内容
   1)慰謝料および弁護士費用として金330万円の支払い
   2)「中西準子のホームページ」への謝罪文の掲載
   3)日本内分泌攪乱化学物質学会発行のニュースレター「Endocrine Disrupter NEWS LETTER」に謝罪広告の掲載

(3)名誉毀損行為の内容
  (i)環境省主催の「第7回内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」(平成16年12月15日〜17日、名古屋市で開催)の第6セッション「リスクコミュニケーション」に、中西氏は座長として、松井氏はパネリストの1人として参加した。
  (ii)その後、中西氏は、自らのHPに「雑感286−2004.12.24『環境省のシンポジウムを終わって—リスクコミュニケーションにおける研究者の役割と責任』」と題する記事を掲載し、その中で、松井氏が、
   1)「環境ホルモン問題は終わった、次はナノ粒子問題だ」というような発言をした
   2)新聞記事のスライドを見せたが、原論文も読まずに記事をそのまま紹介した
旨の記述をした。
 しかしながら、松井氏は、自身の環境ホルモン研究結果から、ナノ粒子の有害性に言及し、新聞記事のスライドを紹介したのであって、中西氏の上記の記述は事実に反するとともに、松井氏の名誉を著しく毀損するものである。
  (iii)松井氏が抗議したため、中西氏は2005年1月20日にこの記事を削除した。しかし、松井氏に対する名誉回復措置は何ら講じられていない。よって、前記(2)の内容を求めて、本件提訴に及んだ次第である。

2.提訴に至った理由
 本件は、決して、松井氏が個人的な名誉回復だけを求めて提訴したものではない。松井氏が提訴に踏み切ったのは、次のような理由からである。
(1)批判そのものが悪いというのではない。むしろ、科学の発展は、建設的批判抜きにはあり得ないといっても過言ではない。しかし、いやしくも「科学者」である以上、他者を批判するときは、少なくとも他者の意見をよく聞き、事実に基づいて、合理的根拠を示して行うべきは当然である。本件のように、碌に他者の発言も聞かず、事実も確認せず、一方的に他者の名誉を毀損するような決めつけを行うことは、「科学者」の名に値しない行為である。ましてや、中西氏は単なる一科学者ではない。科学者を指導育成し、国の科学技術のあり方を決定するという重責を担っている。前記シンポジウムでも、「リスクコミュニケーション」問題の座長を務めていたのである。本件行為は、そのような立場にある者の言動として、看過できないものである。

(2)さらに、中西氏は、「環境ホルモン問題は終わった」と考えておられるようであるが、これは大変な間違いである。松井氏らの研究成果からも、環境ホルモン問題は、複雑ではあるが、人の健康や生態系にとって、決して看過できない重大な問題であることが明らかになっている。したがって、今後も、ますます精力的に研究を進め、有効な対策を講じることが求められている。中西氏のように、国の科学技術のあり方を決定する立場の人が、そのような誤った認識を持ち、その結果、国が政策決定を誤ることになれば、国民の健康や生態系に取り返しのつかない事態も招来しかねない。特に、次世代の子どもたちの発達や健康への悪影響が懸念される。近年、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害やアトピー、喘息などのアレルギー児が増加しているが、その原因のひとつに環境中の化学物質の影響が懸念されているのである。松井氏は、研究者として、国民の一人として、中西氏のこのような誤りを断じて見過ごすことはできないものと考え、貴重な研究時間を割いて、敢えて本件提訴に踏み切ったのである。