第1回口頭弁論まで半年かかった理由

 本件訴訟は、訴状の提出が2008年1月1日。第1回口頭弁論が2008年7月4日と、丸半年かかっている。この理由は、どこの裁判所でやるかということをめぐって、被告が神戸地裁が適切であると主張したためである。

 裁判をどこの裁判所でやるか(土地管轄)は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所でやることになっている(民訴法4条)。人の普通裁判籍は住所、住所がわからない場合は居所、何処にいるかわかららない場合は最後の住所と決められている。
 財産権上の訴えについては、もう少し細かく決まっていて、一般には義務履行地であったり、登記や相続に関する訴えの場合は登記又は登録をすべき地、などと、紛争の対象となっている財産と関連性の深い場所にある裁判所が管轄することになっている(民訴法5条)。

 原則が被告の住所地であれば、原告が嫌がらせで全く関係のない遠隔地の裁判所でわざとに提訴して、応訴の負担をむやみに増やしたりすることを防ぐことができる。民訴法を読むと、これ以外にも、原告被告がどこでやるかについて合意していればそれが認められたり、被告が文句を言わずに遠くの裁判所で応訴したらそのまま管轄にするといったことが決まっていて、まあ、それなりに柔軟に決められることになっている。また、客観的に見て証拠調べの手間などを考えて、もっと良い場所がある場合は、裁判所の方で一部又は全部を移送することもある。つまり、原告被告にとって衡平かつ訴訟する上で無駄がないようにしましょう、ということになっている。

 名誉毀損訴訟は、不幸行為に関する訴えにあてはまり、民訴法5条九号によると「不法行為があった地」が管轄となる。

 すると、「不法行為があった地」をどう解釈するかという問題になる。名誉毀損表現をしたのが神戸の人、されたのが山形の人だと、名誉毀損の被害発生は山形ということになる。この場合は、山形で提訴すれば、他所でやれという話には普通はならない。ところが今回は、東京で提訴したので、本番の弁論を始める前に、そこでやっていいのかという話が出てきた。まあ、被告としては地元で応訴する方が楽だし、私としては、お茶の水大の顧問弁護士を神戸に招待してくれた礼はしなきゃってことで、今度はぜひ東京にご招待と思っていたりするわけで、そもそもそこから綱引きが始まることになった。

 その場所の裁判所は不適切だから変更してほしいと裁判所に対して主張することを、移送請求という。被告の答弁書に、神戸地裁への移送をもとめることが書いてあったのが内容としてはこれにあたる。なお、被告は移送請求の申立について別途書面を提出しているはずである。当然、原告としては、移送はお断り、と主張することになる。双方が具体的にどういう主張をしたかは書面を見ていただくとして、移送請求が出ると、元の訴えとは別に、移送請求を認めるかどうかについて、裁判所が裁判をし、「決定」をださなければならない(判決ではなく「決定」が出る)。

 今回は、

  1. 訴状提出
  2. 被告が、訴状の一部が事実と違う&神戸に移送せよ、と主張
  3. 原告が、事実と違った分も請求内容に入れますよ、ってことで訴変更申立書を提出、移送については管轄は東京、と主張する意見書を提出
  4. 東京地裁が、移送申立を却下する決定を出す。
  5. 被告が、決定に対して即時抗告→審理は東京高裁へ
  6. 東京高裁が、またまた移送申立を却下する決定を出す。
  7. 東京でやること決定。第1回の期日が決まる。

という流れになった。こんなことをしていたから時間がかかって、訴状提出の丸半年後になって弁論が始まることになった。

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