訴状
〒■■■-■■■■ 神戸市■■■■■■■■■■■
原告 吉岡英介
〒650-0001 神戸市中央区加納町3丁目1番25号広瀬ビル8階
阪本豊起法律事務所(送達場所)
上記訴訟代理人
弁護士 藤原唯人
電話 078-331-5627 ファックス 078-331-5114
〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1
被告 国立大学法人お茶の水女子大学
代表者学長 郷 通子
損害賠償等請求事件
訴訟物の価格1,700,000円
貼用印紙 14,000円
請求の趣旨
1 被告は原告に対し,金1,700,000円及びこれに対する平成19年2月24日から支払い済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告は,別紙目録のURL欄の電子掲示板上に存在する,別紙目録の文面欄記載の文言を削除せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決及び仮執行の宣言を求める。
請求の原因
1 当事者
被告は,国立大学法人法により設置された大学である。また被告は,ocha.ac.jpのドメインに関して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダー責任法」)における,「特定電気通信役務提供者」である。
原告は,流体の活性化装置の研究開発と製造,販売等を目的とするマグローブ株式会社の代表者である(甲第1号証)。
本件は,被告が管理するウェブサイト上に,原告の名誉を段損する,ないしは原告を侮辱する書き込みがなされたところ,これに対する損害賠償の請求等をするものである。
2 間題の書き込み
(1)匿名掲示板における書き込み
被告が管理するドメインである,ocha.ac.jpの中に「冨永研究室びじた一案内」というサイトが存する。これは,被告の教職員(大学院人間文化研究科複合領域科学専攻(理学部物理学科))である訴外冨永靖徳が管理するものである(甲第2号証)。
その「冨永研究室びじた一案内」の中に,いわゆるツリー式の匿名掲示板が存在する(以下「本件掲示板」甲第3号証)。これは,ウェブサイト上に展開された掲示板に,不特定多数人が書き込みをすることができるものであり,その書き込みは匿名でなされ,書きこんだ者が誰であるかは,にわかに分からないことになっている。そして,ある書き込みにコメントをするために新たに書き込みを行うと,コメントの相互関係が樹形図で示され,話題の流れを認識できるものである。
この匿名掲示板中の,別紙目録のURL欄に記載する電子掲示板において,平成19年2月13日12時36分に,別紙目録の文面欄記載の文言を文面とする書き込み(以下「書き込みA」)がなされた(甲第4号証)。
(2)本件書き込みの評価
i この書き込みAは,これよりもツリー(樹形図)の上位に位置するhttp://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=23205&form=treeの本年2月12日付け書き込み(以下「書き込みB」)の流れを受けたものである(甲第4,5号証)。
書き込みBにおいては,「Y氏新着情報」という表題のもと,「明日(13日)神戸産業振興センターで新会社と新製品の説明会があるようです」と記されているところ(甲第5号証),原告が代表者を務めるマグローブ株式会社(甲第1号証)が,本年2月13日に神戸産業振興センターにおいて新製晶の説明会を行ったことをあわせて考えれば,この「Y氏」は原告を示すものと考えられる。
また,本件ウェブサイトにおいて,過去に複数回原告が実名をあげられて話題になったことがあるという事情に鑑みても,「Y氏」は原告を示すものと考えられる。
ii しかるに,書き込みAにおいては,「いよいよここじゃなくて、悪マニさんトコのネタになるのか・・・…(遠い目)」と記載されているように,あたかも原告がいわゆる悪徳商法を行っている若しくは始めようとしているかのような記述がなされているものであり,その記述は原告の社会一般の評価を下げ,もってその名誉を著しく害するものである。なお,「悪マニ」とは,「悪徳商法マニアックス」という名称の,悪徳商法にっいての具体的な知識・事例・対策の収集・分類を目的としたウェブサイトの略称であると考えられる(甲第6号証)。
また,書き込みAの投稿者は,当該投稿の時点で2月13日開催の説明会の内容について何ら認識がないと思われ,同時に,説明会で説明された製品について同時点では未だ世間に出回っていないため,書き込みAの投稿者は,当該製品の具体的内容についても何ら認識がないと思われる。このように,当該書き込みAは,説明会の内容やそこで説明された製品の具体的内容についての認識がないまま,なんらの根拠なく憶測のみで投稿されたものであることを付言する。
さらに,書き込みAにおいては「ダウンの人々が法律を遵守したまともな宣伝をすることなんざ期待できないわけだが」と記載され,あたかも原告の取扱製品について,違法な宣伝方法がなされることが必然であるかのように記載されているが,上記のとおり投稿者は製品内容及び販売方法について十分な把握をしていないと思われるところ,相応の根拠なく原告の杜会一般の評価を下げ,その名誉を害するものとなっている。
iii 以上のように,書き込みAは公然と事実を摘示し,原告の名誉を害するものになっている。もしくは原告を侮辱する内容になっている。
3 プロバイダー責任法に基づく通知
(1)プロバイダー責任法に基づく通知
上記書き込みAがウェブサイト上に掲載されることにより,特定電気通信による情報の流通により原告の権利が侵害されていることになる。原告はそのため,平成19年2月21日に書き込みAの存在を,特定電気通信役務提供者である被告に知らせるとともに,この書き込みの削除を求めた(同月23日に通知は到着甲第7号証の1,2)。
しかし,被告は結論としてこれを拒否した(甲第8号証ないし10号証)。
(2)被告の悪意
上記通知により,特定電気通信役務提供者たる被告が,当該特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害されていることを知っていたときに該当する。もしくは,少なくとも被告が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって,当該特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときに該当する。したがって,被告は原告に対して,当該書き込みAによって生じた原告の損害を賠償する責めを負う(プロバイダー責任法3条1項)。
(3)被告に関する補充
この点,本件は国立大学法人が管理するウェブサイト中に存在する,匿名掲示板においてなされた書き込みであることも無視できない。
すなわち,有象無象が書き込むことが前提とされる世間一般の匿名掲示板と異なり,本件はいやしくも国立大学法人が管理する掲示板上での書き込みである。通常の匿名掲示板であれば,それを閲覧する者も,しょせんあることないことが書かれているのだろうという前提のもと,書き込まれた情報を閲覧することになるが,国立大学法人は,一般国民の信頼を大きく得ているのが通常であるところ,そこに書かれた内容は(その内容の真偽にかかわらず)一般国民に対してより信じられやすくなる。
そして,匿名掲示板に無責任な発言が書き込まれたとしても,これが国立大学法人のサイトに存する限り,その発言は必然的に,国立大学法人が一般国民から集めている信頼の傘をかぶることになるのである。
さらに,インターネットに接続できる者であれぱ誰もが自由に匿名掲示板に書き込みをできるところ,国立大学法人が,誰もが自由に書き込みができる匿名掲示板を管理するということは,広く不特定多数人に自らの信頼の傘を提供することになっているわけである。
よって,国立大学法人に対する社会一般の信頼が存すること,及び容易にその信頼を不特定多数人に分け与えてしまうおそれがあることの反射的効果として,国立大学法人たる被告においては,その管理するウェブサイトにおいて,通常よりも名誉段損や侮辱がなされた状態が生じないよう高度な注意義務が課せられるものである。したがって,この点からも本件は被告が原告に対して損害を賠償する責めを負うことが補強される。
4 損害
(1)精神的損害
i 書き込みAによる言われなき名誉毀損行為により,原告の名誉は著しく傷つけられ,人格を侮辱された。
また,本件書き込みAは,原告が代表者を務めるマグローブ株式会社の事業ついて揶揄するものであるところ,ちょうど事業開始にあたり原告が意気込んでいたところで,この書き込みAがなされた点,原告の名誉感情はより大きく害されたと評価するべきものである。
ii ここで,損害論の検討にあたっても,本件が,国立大学法人の管理するウェブサイト中に存在する,匿名掲示板においてなされた書き込みであることを考慮するべきである。すなわち,上記のとおり,国立大学法人は,一般国民の信頼を大きく得ているのが通常であるところ,そこに書かれた内容は(その内容の真偽にかかわらず)より信じられやすく,このため原告の社会的評価の低下,及び名誉感情の侵害の度合いも大きくなる。これは換言すれば,誰でも無責任に発言を繰り返すことができる匿名掲示板において,これが国立大学法人のサイト内に置かれていることにより,その無責任な発言に,国立大学法人が信用性の衣をまとわせることになる。通常の匿名掲示板で発言しても,一顧だにされないような発言であっても,国立大学法人のサイトで発言することで,その虎の威を借ることができるわけである。
iii こうした環境において,原告は社会的評価を低下され名誉感情を侵害されたところ,その精神的苦痛を慰謝するに,金1,500,000円はくだらない。
(2)弁護士費用金200,000円。
(3)小括
以上から,原告の損害は1,700,000円と評価できる。
5 適当な処分
本件において,民法723条ないしは原告の人格権を根拠として,名誉を回復するのに適当な処分として,本件書き込みAの削除を求めるものである。
6 まとめ
以上より,損害賠償の請求をするとともに,原告の名誉の回復のために適当な処分を求めるところ,請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。
なお,本件は原告の請求権の履行地を管轄する御庁に,訴訟を提起した。
その他の事情
1 匿名性に関する補論
なお本件掲示板においては,書き込みをした者のIDが表示されることになっているが,それがゆえに匿名性が払拭されるわけではない。このIDから,ただちにIPアドレスを辿れるものではなく,たとえIPアドレスを知ったとしても,そこで辿れるのはせいぜい,当該IPアドレスを発行したプロバイダー程度である。そのプロバイダーによって,当該IPアドレスを割り当てられた者の個人情報が明かされないことには,誰が書き込みをしたものか特定ができないものである。言わば,個人情報を得られるか否かはプロバイダーの胸三寸にかかっており,ここに拒まれると,書き込んだ者を特定することは事実上不可能になる。
よって,たとえIPアドレスを知ることができたとしても,これによって本件掲示板が匿名掲示板であることが害されるわけではない。
証拠方法
甲第1号証 法人登記簿謄本
甲第2号証 冨永研究室びじた一案内(ウェブサイト)
甲第3号証 ゲストブック兼掲示板(ウェブサイト)
甲第4号証 同
甲第5号証 同
甲第6号証 悪徳商法マニアックス(ウェブサイト)
甲第7号証の1 通知書
同の2 郵便物配達証明書
甲第8号証 お茶の水女子大学ホームページについて
甲第9号証 侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書
甲第10号証 回答書
付属書類
1 訴状副本 1通
2 甲号証写し 各1通
3 資格証明書 1通
4 訴訟委任状 1通
平成19年6月7日
神戸地方裁判所 民事部 御中
原告訴訟代理人 弁護士 藤原唯人
目録
<URL>http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=23211&form=tree
<文面>
>マルチ方式で4年後に上場を目指し
>
いまは会員と出資者を募集してるそう。
あっら--いよいよここじゃなくて、悪マニさんトコのネタになるのか……(遠い目)。
京都大の学歴を自慢したってやることがマルチじゃなあ……。まあ、あの自費出版批判本をみた限り、ダウンの人々が法律を遵守したまともな宣伝をすることなんざ期待できないわけだが。
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