準備書面4

平成19年(ワ)第1493号 損害賠償等請求事件
原告 吉岡英介
被告 国立大学法人お茶の水女子大学

原告第4準備書面

平成20年5月17日

神戸地方裁判所第6民事部合議係御中

原告訴訟代理人弁護士 藤原唯人

 

第1 概要
 参加人冨永による求釈明(平成20年3月17日付準備書面(1))に回答するとともに,同人の主張に反論する。

第2 求釈明について
1 マグローブの具体的効能について
 丙第2号証のパンフレット記載のとおりである。
2 人生100年ネットの記載について
 参加人冨永が指摘する「人生100年ネット」に記載している事柄は,マグローブを含む磁気活水器使用者の実体験報告を記載したものである。
 この点,マグローブ使用者の実体験報告として,甲第43号証の1ないし甲第43号証の44(以下「甲第43各号証」)を提出する。
 なお,甲第43各号証については,証拠化した正本及び副本において,個人を特定できる情報にマスクをかけている。これは,参加人天羽が,各当事者に無断で,本件訴訟の書面や証拠をインターネット上に公開しているところ,こうした参加人天羽の行為によって,甲第43各号証の作成者の個人情報がインターネット上に流出することを危惧するためである。なお,これはマスクをかけた副本について,ネット上にアップすることを許諾する趣旨ではない(その他の書面や証拠も含む)。
 また,マグローブの効能について,行われている実験等について,甲第33号証ないし甲第37号証を提出する(その内容説明が甲第38号証である)。
 「人生100年ネット」に指摘される「K大学のT先生」は,大学院教授であるが,その実名については回答を控える。同教授は,近赤外分光法を得意とし,その手法でマグローブによる水の変化を分析中であるが,同教授の方針で,確実な反復実験ができるまで論文にはしないということである。しかるに,上記のとおり実名と実験中である事実が,インターネット上に流出されてしまうと,同教授の研究に無用の影響が生じるおそれがあるため,この回答を控えるものである。なお,同教授が分析した結果を原告が聴取したものは,甲第33号証記載のとおりである。
3 特許2006-257122について
 甲第39号証記載のとおりである(特開2008-73632)。

第3 参加人冨永の主張について
1 参加人冨永は,原告の携わるビジネスは”悪徳商法と称するに値する”ということを前提に,ゆえに書き込みAは名誉殿損に該当しない,または名誉殿損であるとしても,違法性阻却されるという主張をしているものと思われる。
 この点,あるビジネスが「悪徳商法」と呼べるかどうかは,高度に評価の問題であるため,原告によるビジネスのありかたを示したうえで,その評価の判断を裁判所に委ねるほかない。以下に述べる。
 なお「悪徳商法」の定義づけにっいて,原告は市販の辞典から引用を行った=国語的意味を指摘したのに対し(原告第3準備書面p4),参加人冨永はWikipediaフリー百科事典から引用を行った。Wikipediaは,ネット上において閲覧者が誰でも自由に内容を改変できるものであるところ,ここに定義規定を求めるのは,およそ妥当ではないものと思われる。また,本書作成時において,Wikipediaの「悪徳商法」の項目に「疑似科学的な説明を行い,商晶を売りつけようとするもの」(参加人冨永準備書面(1)p2)という記述は存さなかった。

2 原告が携わるビジネスについて
i 原告が代表者を務めるマグローブ株式会社の,製品である「マグローブ」(以下体件製品」)の利用者によって,上記のような利用結果の報告がなされている(甲第43各号証)。その裏付けのため,上記のとおり鋭意実験がなされている(甲第33号証ないし甲第38号証)。
ii 本件製品は,永久磁石によって作られた流体通路に,水を通すという製品である。そして,上記のような結果がもたらされた原因は,水が磁気によって「何らかの影響」を受け,その影響が人間生活に有意なほどの時間持続したためであるという説を原告は支持しており,これを裏付ける研究を行っているものである(ここで,水が分子レベルでどのように変化しているかは,今後の研究課題とされるものである)。
 これはあくまで原告の一説であり,この一説を支持する人間もいれぱ,これに反対する説(磁石が水にまったく影響を与えない)があることも,原告は承知している。ただ,反対説もあくまで一説に過ぎず,(たとえば地動説のような)万人にとって反対不可能な定説というわけではない。
 例えば,山形大学工学部技術部の四釜繁氏が「磁石で水を変える」と題して,磁気処理装置に水を通すと水の性質に変化が生じること,及びこれがボイラーの水垢防止装置として工業化され成果を上げていること,近時信頼できる学術論文が出てきていることなどを,山形大学のウェブサイト上で紹介している(甲第40号証 参考までに,山形大学は参加人天羽の勤務先である)。原告が支持する説は,一説として受容されていることの証左である。
 このように諸説ある分野であるという前提のうえで,原告の立てる一説が正しいと思われる人に,本件製品を買ってもらうというのが,原告のビジネスのありかたである。
3 悪徳商法であるとの評価について
i ある製品の販売に科学的説明を付する場合,その説明が,絶対にありえないと思われるような代物であれば(たとえば天動説のように完全に否定された説),それは虚偽説明であり「悪徳商法」と呼ぱれる余地もあろう。
 しかし,科学の世界において諸説が入り乱れる分野において,ある一説を支持して販売することをもって「悪徳商法」と評価するのであれば,逆に「悪徳商法」ではないビジネスがきわめて限定的になってしまい,著しく杜会通念に反することになる。すなわち,現段階の研究成果をもって,他説を論破し尽くせない説でない限り,その説に拠って立つビジネスは「悪徳商法」であると評価するなら,「悪徳商法」ではないビジネスの範囲はきわめて狭くなってしまうわけである。
 原告は,諸説入り乱れる分野において,上記のとおり一定の利用結果や実験結果の存在をもとに,一説を支持して,本件製品を販売しているものである。社会通念に照らして,これが「悪徳商法」と評価し得ないことは明らかである。
ii また,参加人冨永自身が,その管理する本件掲示板(水商売ウォッチング)において,「ここで取り上げたからといって、製品の販売がいけないということや、性能が悪いということは意味しません。理由は不明だが効果がある、という製品は、効果の確認がしっかりできているなら販売することには何の問題もありません。現段階で科学的説明が無いことを理由に、有用な水処理方法を捨ててしまうことは、やはり科学の誤用になるでしょう。メカニズムがあとから説明されるというのはよくあることです」という指摘をしている(甲第41号証)。この記述はむしろ,学説の相対性を尊重する,上記原告の主張に沿うものと思われる。
 この点,(参加人冨永は磁気によって水は影響を受けないという説を支持するものであろうが)自分の説に合わないがゆえに,他人のビジネスを「悪徳商法」であると決めっける,参加人冨永の主張は失当であり,自らの立論にも矛盾しているものである。
iii なお,参加人冨永は,ダイポールなる商品に関して株式会社エッチアールディが公正取引委員会から排除命令を受けた事実をもって,原告が「悪徳商法」をしているとする根拠に挙げる。
 しかし,排除命令(排除措置命令)を受けた主体は,原告(ないしマグローブ株式会社)とは当然に別主体であり,商品も宣伝文句も違える。であるのに,漫然と十把一絡げに「悪徳商法」呼ばわりするのは,乱暴に過ぎる。
 また,排除命令を受けたから,イコール「悪徳商法」であるというのも無理がある。公正取引委員会の審決はあくまで行政権におけるとりあえずの判断に過ぎないところ(ゆえに近時,公正取引委員会の審判を廃止して公正取引委員会の処分に関する不服申立ては地方裁判所を第一審とする訴訟で行うという独禁法改正が検討されている),これを受けたから,故に「悪徳商法」と評価するのは,論理に飛躍がある。また,上記のとおり科学分野について諸説の解明は日進月歩であり,過去の一時点で排除命令を受けた科学的説明があったとして,それが未来永劫,排除命令を受けるべきものであるかは別の話である。
 そして,上場企業を含め数多くの著名な企業が,公正取引委員会から排除命令を受けたことがある(顕著な事実)。参加人冨永の論理に従えば,これらの企業は「悪徳商法」をしていると評価するべきことになるが,それでは一般的な感覚から大いに乖離することになろう。排除命令を受けたから「悪徳商法」という理屈に無理がある所以である。
iv 以上から,参加人冨永指摘の事実をもとに,原告が携わるビジネスが”悪徳商法と称するに値する”とはおよそ評価し得ない。
4なお,「悪徳商法」と呼ばれるビジネスが存在する場合,そこには「被害者」がいるのが通常である。「被害者」がいる=他者に害を与えているからこそ,そのビジネスを社会的に糾弾する必要が生じ,これにr悪徳商法」というレッテルを貼ることも許容されよう。
 しかし,原告(あるいはマグローブ株式会社)が携わるビジネスにおいて,「被害者」がいるという事実はおろか,「被害者」が出現する高度の蓋然性があるという事実すら,何ら参加人冨永によって立証されていない。
 この点からも,参加人冨永の主張が不合理であることが認められる。
5 ところで,本件製品を製造するマグローブ株式会社(原告が代表者を務める。甲第1号証)は,平成20年3月28日に,兵庫県知事より経営革新計画の承認を受けたものである(甲第42号証)。一般的に「悪徳商法」と呼ばれるビジネスであれば,このような公的な承認を受けることは困難であると思われる。こうした承認の事実は,原告が携わるビジネスが"悪徳商法と称するに値する"とする参加人冨永の主張への反証となる。
6 なお,参加人冨永においては,あるビジネスを理由なく「悪徳商法」であると指摘すること自体は,名誉段損を構成しうることは争っていないものと思われる。
 原告は,その商品の内容を明らかにし(甲第39号証公開特許公報),販売手法も明らかにしている(甲第29号証ないし32号証)。
 ゆえに,参加人冨永が,原告の携わるビジネスが「悪徳商法」であることを立証できなかった場合,自らが管理するウェブサイトに名誉穀損文言が存することを知りつつ,これを放置したことになることを指摘する。

以上

証拠関係
1 甲第33号証 科学的な観察結果1
2 甲第34号証 科学的な観察結果2
3 甲第35号証 科学的な観察結果3
4 甲第36号証 試験成績報告書
5 甲第37号証 科学的な観察結果5
6 甲第38号証 補充説明書
7 甲第39号証 公開特許公報
8 甲第40号証 磁石で水を変える
9 甲第41号証 水商売ウォッチング
10 甲第42号証 経営革新計画の承認について
11 甲第43号証の1ないし44 磁気活水体験談

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