平成19年(ワ)第1493号 損害賠償等請求事件
原告 吉岡英介
被告 国立大学法人お茶の水女子大学
原告第2準備書面
平成19年10月26日
神戸地方裁判所第6民事部合議係御中
原告訴訟代理人弁護士 藤原唯人
第1 概要
本書においては,以下の内容を述べる。
訴状講求の趣旨第2項の法的根拠についての補足説明(第2)
本件請求について請求原因の追加(第3)
本件書き込みAの不法行為性にっいての補足説明(第4)
参加人の請求の趣旨に対する答弁(第5)
参加人の請求の原因に対する答弁,及ぴ反論(第6)
第2 請求の趣旨第2項についての補充説明
1 請求の趣旨第2項において,原告が本件書き込みAの削除を求めるにあたり,民法723条ないしは原告の人格権をその根拠としている(訴状P6)。
i まず,本件書き込みAが原告の名誉を棄損するものであると認められ,プロバイダ責任法の要件に基づいて被告の原告に対する不法行為責任が認められる場合,被告が原告の名誉を棄損したと評価できるため,「名誉を回復するのに適当な処分」(民法723条)として,原告は被告に対して請求の趣旨第2項の内容を求めることができる。
ii 一方で,人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害されるなどした者は,損害賠償を求めることができるほか,人格権としての名誉権等に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができる(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決)。
とすれぱ,本件書き込みAに不法行為性が認められる揚合,そのうえさらに本件書き込みAがウェブサイト上に放置されているのであれぱ,それは原告の人格権が害された状況が継続しているものであり,これを救済する必要がある。他方で,本件書き込みAを削除したところで,被告には何らの損害も生じない。
以上の諸事情からすれば,原告は被告に対し,人格権としての名誉権等に基づいて,本件害き込みAの削除を求めることができる(東京地裁平成17年10月18日判決において,被告欠席の事案ながら,プロバイダたる被告に対して,同趣旨の判断がなされた)。
第3 請求原因の追加
1 概要
原告は被告に対し,被告のプロバイダたる地位に基づいて,損害賠償請求及ぴ本件書き込みAの削除請求を主張してきた。しかるに,今般本件書き込みAをしたという者が参加人として名乗りでた上,この者の主張により,参加人と被告との関係が判明した。
そこで,原告は被告に対し,使用者責任に基づき損害賠償請求及ぴ本件書き込みAの削除請求をするという請求原因を追加する。
2 被告と参加人との関係
参加人の主張によれば,参加人は,被告の大学院人間文化研究科教授である訴外冨永靖徳(以下「訴外冨永」)の依頼を受けて,「冨永研究室ぴじた一案内」の作成を行い,また訴外冨永の了解を得て「冨永研究室ぴじた一案内」の中に,参加人のベージを設置し,本件掲示板を管理するに至ったとのことである(独立当事者参加の申出書p2)。
他方で,訴外冨永は被告の教職員であり,被告の被用者である。とすれば,「冨永研究室ぴじた一案内」というウェプサイトの作成及ぴ管理は,訴外冨永が大学教員としての職務の執行(事業の執行)についてなしたものであることは明らかであり,訴外冨永が,こうした被告における職務の執行をするにあたって,参加人は訴外冨永のいわぱ履行補助者的な立揚にあったことになる。
3 本件書き込みAを書き込んだ行為の評価
とすれば,参加人は本件掲示板の管理を任されていたところ,本件書き込みAをなした行為も,掲示板を管理する行為の一環としてなされたものと言える(いち閲覧者として感想を書き込んだという評価も考えられないではないが,管理人を自称する者の書き込みであり,他の閲覧者も当該人が管理人であることを認識していると思われる以上,管理行為に基づいてなされたものと考えるのが正当である)。
すなわち,参加人は,訴外冨永の履行補助者的立揚に基づいて,訴外冨永の職務の執行に属する,本件掲示板の管理行為を行うにあたり,本件書き込みAを書き込んだものである。
そして,後述するように(第4),本件書き込みAは不法行為性が認められる内容であるため,害き込みAを書き込むことは,原告の名誉を段損する(または少なくとも侮辱する)不法行為になる。
4 小括
以上より,訴外冨永が被告の被用者として職務を執行するにあたり,その履行補助者的立場にある参加人が,原告に対して不法行為をしたものである。よって,原告は被告に対して,使用者責任に基づいて損害賠償請求をなしうる。同時に原告の名誉を棄損したことに准るため,原告は被告に対し,民法723条に基づいて,本件書き込みAの削除請求をなしうる。こう考えたとしても,(参加人の主張に拠れぱ)参加人は被告との間で,被告サーパの一部分につき参加人の管理一運営を許諾する旨の合意瀞成立しているということであるから(独立当事者参加の申出書P2),被告に不測の負担を強いることにはならない。
第4 本件書き込みAについての説明補充
1 本件書き込みAの不法行為性について,説明を補充する。
2 訴状p2-3で述べたとおり,本件書き込みAは,ツリーの上位に位置する本年2月12日付けの書き込み(「書き込みB」)の流れを受けたものである。この書き込みBにおいては,原告が代表者を務めるマグロープ株式会社が,本年2月13日に神戸産業振興センターにおいて新製品の説明会を行う予定である事実が記載されている。
そして,この書き込みBを受けた,本件書き込みAにおいて,こうした原告の行為を指し,これは「悪マニさんトコのネタになる」行為であると評価している。訴状p3記載のとおり,「悪マニ」とは「悪徳商法マニアックス」という名称の,悪徳商法にっいての具体的な知識・事例・対策の収集・分類を目的としたウェプサイトの略称である(甲第6号証)ことは,閲覧者が容易に想起できるところ,原告の行為が『悪マニさんトコのネタになる」とは,すなわち原告が悪徳商法をする蓋然性が高い旨を指摘しているものといえる。
また,「ダウン」とは,いわゆるMLM商法(マルチレベルマーケテイング商法)において,自己に顧客を紹介してくる人のことを指す俗称であるところ,本件においては原告が代表者を務めるマグロ一プ株式会社に顧客を紹介してくれる人のことを指すものと考えられる(なお,マグロープ株式会社においては「ダウン」という語を用いているわげではない)。こうした言わば原告(あるいは原告が代表者を務める会社)の履行補助者的立揚にある者が,「法律を遵守したまともな宣伝をすることなんざ期待できない」,つまり違法な営業活動をするということを指摘することで,原告(ないし履行補助者的立場の者)が違法な営業活動をする高度の蓋然性があるかのように記述したものである。なお,MLM商法とは,紹介販売において、販売報酬が紹介者の2段階以上(Multi Levelマルチレベル)にわたって支払われるようなr報酬の仕組み」をもって、市揚を開拓(Marketing:マーケッティング)しようという営業手法のことをいう。
このように,本件害き込みAは,原告が本年2月13日に神戸産業振興センターにおいて,原告のピジネスに関して説明会を行う予定であるという事実をもとに,原告が悪徳商法を行う高度の蓋然性があるかのように,あるいは違法な営業活動をする高度の蓋然性があるかのように指摘しているものであり,事実を摘示して原告の社会的評価を低下せしめるものにほかならない。また少なくとも,原告の人格を蔑視する価値判断を示すものであり侮辱に該当する。なお,本件書き込みAがなされた2月13日12時36分時点では,この書き込みAをした者は,上記説明会の内容について当然知り得なかったことを付言する。
第5 参加人の請求の趣旨に対する答弁
1 参加人の請求を棄却する。
2 独立当事者参加による訴訟費用は,参加人の負担とする。との判決を求める。
第6 参加人の請求の原因に対する答弁,及ぴ反論
1 第1項について
認める。
2 第2項について
第1文は不知。第2文及ぴ第3文について争う。
3 第3項について
第1文について,原告が被告に対して金170万円の損害賠償請求を行っている事実は認めるが,その余は不知。第2文は争う。
4 第4項は争う。
5 原告の反論
従前より主張し,また上記第4で補充説明をしたとおり,本件書き込みAは原告の名誉を棄損しまたは原告を侮辱するものであり,不法行為を形成するものである。
とすれぱ,原告はこれを書き込んだ者に対して,不法行為による損害賠償を請求でき,また上記第2及ぴ第3で述べたとおり被告に対しその削除を求めることができる。
本件書き込みAをした者が参加人であるか否かは,原告は不知寿あるが,仮に参加人であるとすれば,原告から参加人に対する損害賠償請求権が成り立つことになる。
よって,参加人による請求は棄却されるべきである。
なお,参加人は予備的に補助参加の申し出をしているところ,原告は本書において,独立当事者参加における請求の趣旨に対する答弁をするものであり,この補助参加の申し出に対する答弁をする趣旨ではないことを確認する。
以上
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