丙第19号証

意見書

平成20年6月20日

参加人 天羽優子

第1 科学的な根拠とは何か
1 新規なことを主張する人が立証する
 この意見書中での「科学」は、自然科学の意味で用いる。
 科学の分野では、常に、新規なことを主張する側が主張の立証をする責任を負う。立証されない間は、主張が正しいと認めないことになっている。これが、科学の分野における基本的ルールである。
 もし、このルールが無かったとしたら、全く間違った説を出しておいて「この説が間違っているのならそのことを専門家は立証してみろ。間違いであることの立証ができないのなら、この説は正しい」という主張が通ることになる。これでは、間違った説がたくさん出てきたままになり、科学そのものの信頼性が低下してしまう。専門家が否定してまわれば良いかというと、それも難しい。専門家が投入できる人的・時間的リソースには限りがあるので、明らかに間違った説が間違っていることを立証するためにリソースを割くことは、無駄であると同時に、本来発展させるべき研究まで阻害する結果となるからである。このため、科学の分野では、新規なことを主張して認めてもらいたいと考える側が、主張を立正する責任を全面的に負うことになっている。
2 追試ができるだけの情報を記載する
 自然科学の対象となるのは、原則として、条件を定めれば繰り返し観測が可能な自然現象である。ある特定の人にしか観測できない現象、主観でしか認識できない現象は、そもそも自然科学の対象にはならない。
 自然科学での立証は、何が起きたかをただ単に記述するだけでは不十分である。後から別の専門家が同じ実験等を行って確認できる程度に、観測の際の条件を明示しなければならない。例えば、用いた試薬、試料調整の方法、測定時の温度や圧力、用いた測定装置とその性能、動物実験であれば動物の種類や年齢といったものが、実験の条件となる。
 科学で「正しい」とされるには、他の人の追試によって確認されることが必要なので、訓練を受けた人なら誰でも追試ができるだけの情報を記載することになっている。
 なお、学会や論文誌の中には、ほとんど否定された特定の説に賛同する人のみが集まって作っているものがあるので、引用や参照を行う時には注意が必要である。
3 科学は保守的である
 科学の歴史において、最初は全く認められなかった説が後になって認められたということが無かったわけではない。しかし、そのようなことは歴史上非常に希なことであり、希であるが故に語り継がれたり科学の歴史に残ったりする。認められなかった説の圧倒的大多数は、そのまま消え去っている。また、後に認められた説は、単に説を唱えて放置しておいたわけではなく、認めさせるための証拠となる事実を集め、説の精度を高め続けるという努力が行われた結果、正しいことが確認されて認められたのである。
 科学のうち、これまでにほぼ正しいとされた部分は、多くの人の直接あるいは間接の追試によって支えられているので、それなりに強固である。経験の積み重ねによって支えられている部分に変更を加えるには、それに見合っただけの決定的な証拠が必要である。

第2 原告が提出した科学的な観察結果の検討
1 甲第33号証について
 実験に使用した磁気活水器の名前が書かれていないので、マグローブを用いたのか、他社の磁気活水器を用いたのかがわからない。
 測定結果のグラフには、縦軸横軸が示されていないので、検討のしようがない。同じ色の線が重なっているが、どのような測定をしたのかもはっきりしない。
 近赤外吸収の実験で、追試をするのに必要な情報は、
• 測定装置(製造メーカーと型番、自作の場合は装置詳細が掲載された文献)
• 測定方法(透過法か反射法か等)
• 試料セル(窓あるいはプリズムの材料、セルの厚み等)
• 測定温度
• 測定した波長範囲
• グラフの縦軸(透過率なのか、吸光度なのか、吸収係数なのか等)
といったものである。甲第33号証及び補充説明書の情報だけでは、確認のための実験ができない。
 なお、天羽が証拠書類をインターネットで公開するからグラフの軸を隠したという主張は意味不明である。先に述べたとおり、科学の分野で当該実験の正当性を主張するならば、他の専門家が追試できるだけの情報を公開する必要があるからである。原告の主張は、自ら追試に耐えないと認めているかのごとくである。
2 甲第34号証について
 検査に使用された磁気活水器がマグローブであるという記載がないため、マグローブについての試験であるかどうかがはっきりしない。
 マグローブを配管の一部に取り付けた場合、水は、マグローブの中を1回通過するだけであり、循環して何度もマグローブ内を水が通過するわけではない。実験では、水を循環さあせているので、マグローブが実際に使用される条件とは異なっている。

3 甲第35号証について
 グラフの縦軸が何であるか示されていないため、NMRの測定で何を見たのかがはっきりしない。
 NMRの測定は、測定のためのラジオ波のパルスの与え方だけでも、教科書を見ると数通りはある。さらに、分子を測定すると通常は複数のピークが出るが、どのピークに着目して甲第35号証のグラフを描いたのかもわからない。
 何をどのように測定したのかをはっきりさせるには、次のような情報が必要である。
• 測定装置(メーカー、型番、分解能)
• 油の化合物としての特定。食用油等であれば、メーカー名や商品名。
• 水と油の混合比と混合条件。試料を保存しているとき、油も入った状態のままであったのか。撹拌の方法と時間など。
• 数あるNMR測定法のうち、どういう測定をしたのか(パルスのかけ方など)
• 観測した核種は何か
• 水道水を使ったとあるが、電子スピン(磁性体)があると磁気共鳴のスペクトルはうまく出ないはず。水道管由来の鋼材の細かい破片や錆の除去はどうしたのか。その他、測定前にやった前処理があれば全て記載すべき。
• 仮にケミカルシフトのピーク強度の比較をしているのなら、強度の基準物質として何を使ったのか。
• グラフの縦軸と横軸は具体的に何か。縦軸の数値を出す手順。
4 甲第36号証について
 マウスの蚊にさされやすさには個体差がある。マグローブ水を飲ませたことによって蚊にさされにくくなったというためには、個体差のばらつきを超えて違いがあることを示さなければならない。
 ところが、実験ではマウスを1匹ずつしか使っていない。これでは、個体差による違いが出ているのか、マグローブ水の効果なのか、評価のしようがない。
5 甲第37号証について
  燃焼器が市販品ならその機種名及び製造メーカーを、独自のものであるなら大体の構造が示されていないと、同等の試験をすることすらできない。企業で試験を行っていて燃焼器が企業秘密であるというのであれば、試験を行った企業名を明記すべきである。
 燃焼結果の表には単位が抜けている。また、どのような測定器で測定した結果なのかも全く示されていない。
6 甲第40号証について
 水の磁気処理について、出回っている文献を紹介しただけの内容である。
 ボイラーに付着する水垢の防止効果については、炭酸カルシウムの結晶成長に磁場が影響を及ぼすという結果が、クランフィールド大学のグループによって示されている。ボイラー等の場合は、循環水の流路に磁場をかけるというものであり、通常は水の温度も高く、マグローブが使われている条件とは全く異なっている。
 また、甲第39号証の中では、「簡単に試してみることが出来る興味ある事実」と述べられているだけで、実際に追試をしたらどうであったかについては何も書かれていない。
 磁気処理に興味を持った人がいたという事実がわかるだけである。
7 甲第41号証について
 「水商売ウォッチング」を作り始めたのは、1999年の2月7日からである。甲第41号証に示すトップページのように変更したのは、ある程度内容が増えてからだったと思う。多分、2003年頃までには、甲第41号証のような内容にまとめたと記憶している。もちろん、「水商売ウォッチング」のトップページの内容は、私がウェブサイトを作るにあたって掲げた方針に過ぎない。
 丙第17号証に示した経済産業省による合理的な根拠の具体的な内容が公表されたのは平成16年(2004年)である。丙第18号証は、景品表示法の4条2項についてのガイドラインで、やはり「合理的な根拠」が満たすべき要件が書かれているが、公表された日付がはっきりしない。景品表示法4条2項そのものは、平成15年(2003年)の改正で追加されたのであるから、ガイドラインが出されたのも2003年以降であろう。
 つまり、私が「水商売ウォッチング」のトップページを書いた後で、重要な法律改正が行われ、表示の合理的な根拠の具体的な内容が、公正取引委員会と経済産業省によって定められたことになる。合理的な根拠の判断基準としては、私がウェブサイトの運用指針として書いたものなどではなく、丙第17号証や丙第18号証に示したガイドラインが優先することは言うまでもない。
 私が甲第41号証で「理由は不明だが効果がある、という製品は、効果の確認がしっかりできているなら販売することには何の問題もありません。」と述べた部分のうち「効果の確認」については、丙第17号証や丙第18号証に沿ったやり方で確認されなければならない。この点では、甲第41号証の内容は説明が不足している。その理由は、私が、丙第17号証や丙第18号証のガイドラインを反映させてもう少し詳しく記述するのが遅れたからである。いずれ、ガイドラインをふまえた形に書き直す予定である。
8 甲第43号証について
(1) マグローブの体験談
 体験談には、マグローブの体験談であることがはっきりわかるものと、そうでないものが混じっているので、まず、マグローブの体験談がどれであるかについて検討する。
 表中の番号は、甲第43号証の1から44までの番号、判定は、○:マグローブとわかるもの、△:不明なもの、×:明らかに違うもの、である。まず、体験談中に、「マグローブ」と書かれているものを○、書かれていないものを△とした。
 訴状別紙1を私が掲示板に書き込んだのが2007年2月13日であり、原告は
• 天羽は原告のビジネスの内容を知らずに別紙1内容を書いた
• 掲示板の書き込みは説明会の前日
と主張していることから、マグローブが一般に入手可能になったのは、2007年2月14日以降となる。この時期以前の体験談については×とした。

番号 判定 理由
1 3行目「マグローブ水」
2 11行目「マグローブ」
3 2ページ4行目「マグローブの水」
4 1行目「マグローブ」
5 11行目「マグローブ」
6 11行目「マグローブ」
7 15行目「マグローブ」
8 3ページ2行目「マグローブ」
9 「磁気活水」としか記載されていない
10 × 4行目「活水器を着け3年位になります」 3年前にマグローブは無かったはず。
11 1行目「マグローブ」
12 × 1ページ15行目「活水器を家にもつけて4年が経過」 4年前にマグローブは無かったはず。
13 「活水器」としか記載されていない。
14 3行目「マグプロ」
15 1行目「マグローブ」
16 1行目「マグローブ」
17 △(×?) 「磁気活水器」としか記載されていない。 カミソリの刃について「(一年に一回も替えませんねぇ)」とは、数年使ってからでないと書けないのではないか?
18 「活水器」としか記載されていない。
19 「活水器」としか記載されていない。
20 1行目「マグローブ」
21 1行目「マグローブ」
22 △(×) 装置についての記載無し。 写真はカラーの施術前後の比較で、水の違いは関係ない。
23 △(×) 「水」としか記載されていない。 写真はカラーの施術前後の比較で、水の違いは関係ない。
24 △(×) 「水分補給」としか記載されていない。 写真はカラーの施術前後の比較で、水の違いは関係ない。
25 2行目「マグローブ」
26 1行目「マグローブ」
27 1行目「マグローブ使用」
28 4行目「マグローブ」
29 3行目「マグローブ水」
30 「磁気活水体験談」の記載のみ
31 「磁気活水器」の記載のみ
32 13行目「マグローブ」
33 × 12行目「平成16年(2004年)も症状が出ない」の記載があるが、まだマグローブは無いし、原告がこの頃販売していたのはHRD社のダイポールである。
34 16行目「マグローブ」 但し、更に良くなったという記述であり、他の磁気活水器についての体験談が前半に書かれている。
35 5行目「マグローブの水」
36 3行目「マグローブ」
37 2行目「マグローブの水」
38 4行目「マグローブ」
39 8行目「マグローブ」
40 1行目「マグローブ」
41 × 「磁気活水」の記載のみ 「カーネーションが毎年毎年咲き今年で4年目!!」とあるが、4年前にマグローブは無い。
42 1行目「マグローブ」
43 「磁気活水」の記載のみ
44 4行目「マグローブ」

 甲第43号証では、左上に「磁気活水体験談」と印刷してある体験談専用用紙が多く使われている。専用用紙に書かれたものの中には、甲第43号証の33や41のように、別の活水器についての体験談が混じっている。
(2) 体験談を集めても科学的根拠を示したことにはならない
 甲第43号証には、マグローブを取り付けてから、愛犬の血尿が治った(43号証の1)、癌や糖尿病治療の予後が良くなった(43号証の2)、肌がきれいになった(43号証の4)といった体験が書かれている。
 これらの体験談が全て事実であったとしても、マグローブに効果があるという科学的な根拠にはならない。体験談だけでは、何人が使って何割の人に効果があったのかがはっきりしない。また、体験談だけでは
• 効果が本当にマグローブによる
• 実際には他のことが原因(病院の治療など)で効果があったのだが、たまたまマグローブを使い始めた時に重なっていた
• 効くと信じて使ったため、精神的な安定を得て、良い結果になった
のどれであるかがはっきりしないので、体験談を集めても、マグローブに効果があるという結論を出すことができない。

以上

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