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III 送信防止措置を講じるための対応手順
1 申立ての受付
プロバイダ等は、送信防止措置の申立てを受ける場合、自己の会員・契約者以外の者から受ける場合が多いと考えられる。したがって、プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置を講ずることの申出又は発信者情報の開示に関する請求を受けることがあることを想定して、苦情・相談窓口を設置し、自己の契約者以外の者からの申出に対しても迅速に対応できる態勢を整えることが望ましい。
プロバイダ責任制限法3条2項2号による発信者への照会手続を開始するためには、次の条件を全て満たす形式で侵害情報の送信防止措置の申出を受け付ける必要がある。1)送信防止措置を要請する者が特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者であること2)特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする情報であること3)侵害されたとする権利が特定されていること4)権利が侵害されたとする理由が述べられていること5)送信防止措置を希望することの意思表示があること
プロバイダ等が上記の侵害情報等を書面により申立者から受け付けることは、プロバイダ等が下記2の自主的送信防止措置の要否を判断する場面でも有益と考えられる。
なお、申立者との関係では、上記の5つの項目が全て充足されなくとも損害賠償責任を免れない場合があることに注意が必要である。例えば、1)の条件が充足されておらず、他人からの警告であったり、5)の条件が充足されておらず、送信防止措置を希望するかどうかが明らかでない場合であったとしても、当該警告によって発信された情報が特定され、それが名誉殿損やプライバシー侵害など不法行為の要件を満たすときなど、プロバイダ責任制限法3条1項2号に定める「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」に該当する場合もある。
2 プロバイダ等による自主的送信防止措置の要否
プロバイダ等の管理下にあるサーバに格納されたウェブページ上に、送信防止措置の要請や違法情報が掲載されている旨の苦情を申立者又は第三者から受けた場合、当該情報が他人の権利を侵害しているか否かをプロバイダ等なりに判断することとなる。当該情報が他人の権利を侵害していることが、II章の判断基準に従い明らかである場合、申立者との関係では、「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」(法3条1項2号)に該当することになるため、損害賠償責任を負わないようにするには、自主的に送信防止措置を講じることとなる。発信者との関係では、「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき」(法3条2項1号)に該当することとなるため、送信防止措置を講じても発信者からの損害賠償請求に応じるリスクはないといってよい場合である。しかしながら、皿章の判断基準に照らしても、送信防止措置を講じても差し支えないかどうかの判断がつかない場合も多い。このような場合は、プロバイダ責任制限法3条2項2号に基づき、照会手続をとることができる。また、3条2項2号の規定にかかわらず、プロバイダ等が自主的送信防止措置を許されると判断した場合であっても、措置の緊急性まではないと考えられる場合には、まず照会手続により発信者による対応等当事者問での問題解決を促すことが望ましいとも考えられる。
3 照会手続の手順
プロバイダ等において送信防止措置を講じても差し支えない場合であるか否かの判断がつかない場合、すなわちプロバイダ責任制限法3条2項1号に牢める「不当に他人の権利が侵害されたと信じるに足りる相当の理由」の存否が明らかでない場合は、3条2項2号に定める手続を利用することができる。
1)申立者の確認
照会手続においては、送信防止措置を要請する者が特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者又はその代理人(弁護士など)であることを確認しなければならない。したがって、例えば、次の手順で本人確認をする必要がある。
ア)書面による場合3か月以内の印鑑登録証明書を添付のうえ、登録印鑑(いわゆる実印)で押印したものを受領する。
イ)電子メールによる場合公的な電子証明書により本人が発信したメールであることが証明できる電子署名が付されていることを確認する。
ウ)代理人がある場合ア)又はイ)のほかに代理人への委任状午を添付してもらう。
なお、確実に本人確認ができる場合は上記のとおりであるが、他に慣習的に用いられる本人確認手段(旅券、運転免許証その他の身分証明書の写し等)で確認をとり、実印以外の印鑑により提出を求めたり、第一報としてFAXを受信するなどの方法も考えられる。いずれにせよ、プロバイダ等の責任において妥当と考えられる本人確認手段を採用する必要がある。
2)侵害情報等の特定
照会手続を開始するには、申立者本人又はその代理人から侵害情報等の通知を受けることが必要である。プロバイダ等は、これらの侵害情報等を発信者に伝えて、送信防止措置を講じるか否かを照会する必要があるため、発信者が送信防止措置を講じることに同意するか否かを判断するに足りる侵害情報等が特定できない場合、プロバイダ等は、通報者に不明確な点などを書式を修正して再提出してもらうなどの方法で確認する必要がある。不明確な点などを質しても、侵害情報等が十分に特定されない場合、申立者の主張におよそ理由が認められない場合、又はそもそも当該侵害情報が自己の管理下にない場合等には、プロバイダ等は、照会手続を開始することができないことを遅滞なく申立者に知らせることが望ましい。
また、以下め情報は、発信者にそのまま伝えられるべきものである。
ア)特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする情報
イ)侵害されたとする権利
ウ)権利が侵害されたとする理由
エ)送信防止措置を希望することの意思表示
なお、発信者に送信防止措置を講じるよう要請した者の氏名等を開示してよいかどうかについては、申立者が発信者との関係で氏名等を伏せることに合理的な理由がある場合(写真の掲載など送信者が申立者の氏名を知らない場合など)もあることから、原則として非開示とすべきである。ただし、申立者から開示することに同意があったときはこの限りではない(別添書式)。また、照会手続に関連して送信防止措置を講じるよう申し出ることができるのは、申立者本人又はその代理人だけであるから、名誉殿損、プライバシー侵害等の権利侵害においては、照会手続が行われたことをもって申立者名は自然に発信者に推測できるものであるが、それはやむを得ない。
3)照会可能な場合
プロバイダ等は、発信者に対し、送信防止措置を講じるよう要請があったこと及び申立者から提供された侵害情報等を通知し・送信防止措置を講じることに同意するか否かを照会することができる。この場合に、申立者の氏名等を開示して差し支えないかどうかは、前記2)を参照すること。
この場合において、当該通知が発儲に到達した後、7日以内にプロバイダ等所定の方法で反論をしない限り、プロバイダ責任制限法3条2項2号の趣旨に従い、削除の送信防止措置が行われることを書き添えておくことが、発信者に事態を認識してもらうために望ましい。(別添書式)
4)照会ができない場合
プロバイダ等が侵害情報等の通報を受けた場合、発信者に対し、送信防止措置を講じるよう要請があったこと及び申立者から提供された侵害情報等を通知し、送信防止措置を講じることに同意するか否かを照会することは法令上の義務ではない。したがって、発儲と連絡することができない場合には、照会手続を進める必要はない。
この場合、照会手続を経由せずに即時に送信防止措置を講じても差し支えない場合(3条2項1号)に該当していれば、プロバイダ等の判断で送信防止措置を講じることができる。他方、即時に送信防止措置を講じて差し支えないかどうかの判断ができないときには、申立者からの損害賠償責任を免れないおそれが高い場合(法3条1項2号にいう「他人の権利が侵害されたことを知ることができたと認められる相当の理由」がある場合)に該当するかどうかの判断も困難であるのが一般的と思われるので、発信者からの訴訟リスクを考慮して静観するか、申立者からの訴訟リスクを考慮して送信防止措置を講じるかいずれかの対応となる。
後者の場合、契約約款又は利用規約にプロバイダ等の裁量で削除等の措置がとられることが明示されていれば、たとえプロバイダ責任制限法3条2項1号に該当するか判然としない場合であったとしても、当該契約約款又は利用規約が合理的であると認められる範囲であれば、当該規定に基づく送信防止措置を講じることは可能であろう(ただし、消費者契約法との関係で片面的な免責条項は無効とされるおそれがあるので規定の仕方に注意を要する。)。
5)照会手続
上記の手順により申立者の本人確認(代理人による場合は委任関係の確認を含む)ができ、侵害情報等が特定され、照会可能となった場合において、発信者への照会手続は、申立者からの送信防止措置の要請を受けた後、遅滞なく行うことが望ましいといえる。ただし、プロバイダ等による自主的送信防止措置の要否に関する判断に手間取ったり、そもそも送信防止措置を講じるべく照会手続を行う理由がないと判断したり、送信防止措置以外の対応(当事者間解決の促進等)を図ったりすることなどによって、申立者からの要請を受けた後も相当期問を経過しても照会手続を開始できない場合もありうる。プロバイダ責任制限法においては、送信防止措置の要請を受けた後で照会手続を開始する義務があることを定めたものではないから、このようにやむを得ない理由があるときは、プロバイダ責任制限法3条1項各号に該当する場合を除き15、プロバイダ等は申立者に対して照会手続遅延の責任を負わないと考えられる。
照会手続は、参考書式により行い、当該照会が発信者に到達した日の翌日から起算して7日以内(例えば3月1日に発送した場合、同一市町村内であれば2日に到着するとして、3月9日まで)に発信者からの反論があるかどうかを確認する(参考書式)。なお、当該書面(照会状)が発信者に到達した日を確認するには、郵便を用いる場合には、配達記録郵便等の確認手段を用いることが確実である。
6)照会に対し発信者から送信防止措置を講じることに同意しない旨の回答があったとき
照会手続をとるのは、プロバイダ等において、申立者との関係で、「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由」がない場合であろうから、発信者から反論がなされた場合、その反論が明らかに理由のないものである場合を除き、プロバイダ等としては送信防止措置の要請を受けた情報に対して送信防止措置を講じなかったとしても、損害賠償責任を免れるものと考えられる。
また、発信者との関係では、送信防止措置を講じるよう申し出を受けた時点で「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」(3条2項1号)があると判断したときは照会手続をとらずに削除等の送信防止措置を講じるわけであり、この意味での「相当の理由」がないと判断できるからこそ照会手続をとったものと思われるので、発信者から反論がなされた場合、その反論が明らかに理由のないものである場合を除き、送信防止措置を講じれば発信者から作為責任を問われるおそれがある。
なお、発信者から送信防止措置に同意しない旨の回答を受けた場合、プロバイダ等が送信防止措置を講じることができるかどうかは、照会手続を経由しない場合と同様と考えられる。言い換えれば、照会手続を経て反論があった場合でも、当該反論に理由がないことが明白な場合など、法3条1項各号又は3条2項1号に該当することをプロバイダ等が確認できれば、削除することもありうる。
7)照会に対し発信者から送信防止措置を講じることに同意しない旨の回答がなかったとき
プロバイダ責任制限法3条2項に該当する場合であり、発信者に対する作為責任を負うことなく、送信防止措置を講じることができる。また、申立者との関係では、送信防止措置を講じることにより不作為責任をも同時に免れることになる。
4 送信防止措置以外の対応
プロバイダ等は申立者から申告があった情報について自ら送信防止措置を講じる必要まではないと判断した場合であっても、照会手続をとるなどして、発信者と申立者との直接交渉による紛争解決を促すなど、当事者間による自主的問題解決を促進する措置を講じることが望ましい。また、ウェブページ内の掲示板への書き込みについて当該ウェブページをホスティングするプロバイダ等に最初に被害申告があったケースのように、特定通信役務提供者が重畳的に存在する場合(プロバイダ等とウェブページ開設者・掲示板管理者)には、申告を受けたプロバイダ等は、より当該情報への管理可能性の高い特定電気通信役務提供者(ウェブページ開設者・掲示板管理者)に対してまず対応を求めるように申立者に要請するという対応もありうる。ただし、申立者に現実に被害が発生しており、被害の拡大を防止するために即時に対応する必要がある場合など緊急性がある場合にはこの限りではない。
15 プロバイダ責任制限法3条1項各号に該当しても、それだけで直ちにプロバイダ等に送信防止措置を講じる作為義務違反による損害賠償責任が生じるわけではなく、発信者に対し遅滞なく警告を発し、申立者との相談に応じるなど適切な対応を行うことにより削除義務違反を免れるケースもある。
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